地域の人々を支える立場へ

地域交流の中心に

幼老複合施設は人間関係が希薄になっている現代において、さまざまな世代が交流できる場として今後ますます必要になることでしょう。介護や保育のサービスが受けられるだけでなく、地域交流の場としての役割も期待されています。

地域交流の中心に

国も注力している

厚生労働省も高齢者や障がい者、子どもたちが一緒に利用できる幼老複合施設を推進しています。幼老複合施設が注目を集めるきっかけとなったのが、小規模で家庭的な雰囲気の中で高齢者や子どもたちに柔軟なサービスを提供する富山型デイサービスの拡大です。
これまでは「高齢者は高齢者の介護施設」「障がい者は障がい者の介護施設」「幼児や児童は保育園や学童保育」と対象者を限定した縦割りの福祉サービスが一般的でした。行政の補助が必要不可欠で、クリアしなければならない法律もありましたが、その後規制が緩和され、「高齢者」「障がい者」「子ども」の垣根なく「誰でも受け入れる」ことをモットーとした富山型デイサービスが新たな福祉サービスの形として全国に広がっていったのです。
その数は年々増え、平成5年に1件のデイサービスからスタートした富山型デイサービスは10年後の平成15年には全国205ヵ所へ、さらに10年後の平成25年には全国1,140ヵ所へと急速に拡大していることから、対象者を縦割りした介護や福祉ではなく、地域共生の介護・福祉サービスが求められていることが分かります。

地域全体で見守る

これまで高齢者は介護施設という小さなコミュニティで介護される側という役割しかありませんでした。現状を維持することが目的でしたが、幼老複合施設には高齢者が自分の役割を見つけ、日常生活の改善を促す効果があります。介護される側だった高齢者が子どもとふれあうことによって「何かしてあげたい」という気持ちが芽生え、積極的に行動するようになるからです。
実際に、食事中に自分のお椀の蓋が取れなかった認知症の高齢者が、幼老複合施設で子どもと一緒に過ごすうちに隣に座る子どものお椀の蓋を取ってあげるようになった、というケースもあります。高齢者しかいない介護施設ではこのような行動は見ることができなかったでしょう。
また、一緒に過ごす子どもにも良い影響を与えます。高齢者と過ごすことで思いやりの心を育み、人を労わる気持ちを自然に持てるようになりますが、子どもしかいない空間では違う世代の人を思いやる気持ちを身につけるのは難しいでしょう。
介護施設と保育園、学童保育が1ヵ所にあることで、自然と人が集まるようになります。家庭だけではなく地域全体で子どもの教育や高齢者の生活を見守ることになるため、コミュニケーションの拠点となっていくことでしょう。幼老複合施設が街のコミュニティの中心となることも、そう遠くない未来になるでしょう。